こんにちは。
日本製LEDヘッドライトの日本ライティング内藤です。
昨年の10月頃は工場見学に来られるyoutuburさんが増え、社内はにぎやかになっていました。
この動画を見て初めて日本ライティングを知った方も多く、私たちの取り組みやこだわりを知っていただけたことに嬉しさを感じます。
定期的な工場見学については、コロナウイルスの影響で開催を見合わせていますが、落ち着いたときには再開しようと思っています。
お越しになったときは、全て撮影OKです。
社長が「うちは隠すところは一切ありません!好きなところを撮ってください」と工場見学に来られた全ての方に言っておりますので(笑)
レストアGTさんやガレージ11さんの動画のコメントで「太っ腹な社長!」とコメントをよく見かけましたが、あのときだけではなく、いつも太っ腹です(笑)
どこでも撮っていいと言われると、逆に撮りづらくなると思いますが、やっぱり人気は、アルミの削り出しのところでパシャパシャと撮影する方が多い傾向にありますね。
あのアルミの長い棒が切断され、ヒートシンクの形に削られていく工程が、工場好き、機械好き、LED好きにはたまらないようで、僕も最初に見たときは何十枚も写真を撮ったことを今でも覚えています。
そんな、アルミについて今日は少しマニアックな視点で解説をして行こうと思っています。
目次
LED製造する上で、最も大切にしているのは「放熱性」と記事や動画などで口を酸っぱくして言っています。
もうご存知の方も多いと思いますが、日本ライティングでは、「A6063」のアルミを使用していますが、この前アルミ関係に詳しいお客様からこんな質問が届きました。
「A6061のほうが熱伝導率は高かったのでは?」
なんと通な問い合わせに対して、開発のSさんも「この方知っている!」と何やらニヤニヤしながら、目の前に座っている僕の顔を覗き込んできました。
※最初は何で見てんだ?と不思議でしたが後々聞くと、そのような経緯のようです(笑)
すごく良い質問だったので、皆さんにも知っていただきたいと思い記事にしました。そして、なぜ私たちがA6061ではなく、A6063のアルミを使用してLEDを造っているのかという答えにもなるので、気になる場合は最後まで読み進めてください。
色々な要素が必要になりますが、その中で「放熱性が高いこと」が一つ挙げられます。
放熱性が高いというのは、「=熱伝導率が高い部材」を用いる必要があります。(部材としてプラスチックやアルミなどが用いられますが、ここではアルミに焦点を当ててお話します)
熱伝導率は、簡単いえば”熱の移動のしやすさ”。
熱は温度が高いところから低いところにいく性質があるため、ヒートシンクは、そういう性質を生かした放熱方法となります。
また、製造の視点から考えて見ましょう。
たとえば、ダイキャスト製法(型にアルミを流し込む製法)は、流動性のあるアルミが求められ、私たちのように削り出し製法の場合は、加工ができる”硬さ”が必要となります。
加工できる”硬さ”というのが良くわからないと思いますので、後ほど事例を交えて解説します。
このように私どもが部材に求めるのは、熱伝導率が高く、硬さが削り出し製法に最適なアルミを選び、使用しています。
アルミには、材料の製造工程の違いから大きく「鋳造材」と「展伸材」に分けられます。鋳造材の90%が自動車や二輪車に使われているほど、自動車業界では当たり前の素材です。
何を言いましょう、LEDの殆どはダイキャスト製法で作られているため、ダイキャスト製法に用いる鋳造材アルミが使用されています。
その中でもっとも使用されているのが「ADC12」というアルミです。ADC12の放熱性については、別のページでまとめていますので、興味があればこちらをご覧ください。
また「展伸材」はプレスや鍛造、押出し加工、切削加工に用いられ種類は1000番台から7000番台のアルミがあります。番手の違いは、化合物の有無や熱伝導率、硬度などに違いがあります。
「A6061のほうが熱伝導率は高かったのでは?」
のお問い合わせについて考えて行きましょう。私たちが使用しているアルミは展伸用のアルミですが、1000番から7000番台の種類がある中で、「なぜ、A6063を削り、ヒートシンクとして使用しているのでしょうか」詳しく見ていきましょう。
LEDの放熱性には、熱伝導率の数値が大きく影響してきますが、同じアルミでも2倍近く数値に差が出ます。
最も熱伝導率が高いのは1000番台のアルミです。1000番台は化合物がない純アルミ。1円玉などに使用されています。次に私たちが使っている6000番台のA6063。ざっくりまとめた熱伝導率のランキングです。
表に出ている数値が高いほど熱伝導率が高く、放熱性が優れているアルミになります。これをみて勘の良い方なら「A6063ではなく、1000番台のアルミを使えば良いのでは?」と思われると思います。
なぜ、1000番台のアルミを使わないのでしょうか。次は、硬度の項目を見ていきましょう。
アルミを削り成形するのに一番求められるのは、「アルミの硬度」です。手彫りでも何でもいいのですが、イメージしてみてください。
今から削ろうと力を込めた刃を部材に当てた瞬間にグネっと部材が曲がったら使い物になりませんよね?ましてや機械で削り出すとなるとある一定以上、部材に硬度が無いと成り立ちません。(硬くなればなるほど脆くなるため、”ある程度の硬度“が適切な表現になります)
そのため、LEDの製造では、熱伝導率だけではなく硬度もあるアルミを選ぶ必要があります。
先程、熱伝導率の項目で一番数値が高かった1円玉に使用される1000番台のアルミは、アルミの中で一番硬度が低い部材になります。
どのくらい低いのかと言うと、1円玉(純アルミ)でたとえると、握力がある人が握ればグニャと曲がってしまう程度の硬さしかないのです。これでは、LEDを組み立てる部材としては力不足なため、より硬いアルミが必要となります。
私たちが行いたいのは、「放熱性を最大限に高めたヒートシンクを製造すること」で、製法についてはダイキャスト製法ではなく、熱伝導率の効果を最大限に発揮できる削り出し製法に耐えられるアルミを使用することです。
そう考えるとA6063のアルミが最もヒートシンクに適していることになります。熱伝導率では純アルミの1000番台に次ぐ数値となり、硬度も硬すぎず柔らかすぎず加工ができLEDに必要な要素を兼ね備えたアルミとなります。
お問い合わせのA6061については、熱伝導率がA6063と比べ劣るため採用していない状況になります。
過去に多くの検証を繰り返し、今の製法・素材に行き着きました。この先もっと良い素材や製法が出てくるかもしれませんが、現時点では最も放熱性の高いものを選んでいます。
熱伝導率・硬度の両面から最もLEDのヒートシンクに適しているのはA6063のアルミになります。
今回はすごく良い質問でしたので記事として取上げさせていただきました。みなさんも疑問になることがあれば気軽に問合せしてきてください。