こんにちは。
日本ライティングの内藤です。
ハイブリッド車は、ガソリンエンジンとモーターの両方を使い走行するクルマです。そのため、モーターを駆動するため、特別なバッテリー(駆動用バッテリー)が搭載されています。
この駆動用バッテリーだけでなく、合わせてクルマの電装品に使われるバッテリーが搭載されています。
よく「ハイブリッド車はバッテリー上がりしない」と言われる人がいらっしゃいますが、ガソリン車のようにバッテリー上がりします。
今回はハイブリッド車のバッテリー上がりの疑問について詳しく解説します。
内藤
なんでと聞いたら、ハイブリッド車はバッテリーが2つあるから1個がバッテリー上がりしても、もうひとつあるから大丈夫だと。
それは違うと話したんですよ。でも、友人を納得させるほどの知識がなくて。
友人にしっかりと本当のことを教えてあげたいので、ハイブリッド車のバッテリーについて、詳しく教えてください。
島田
内藤
島田
ハイブリッド車は、エンジンとモーターを切り替えながら走行するクルマで、モーターを駆動させる専用のバッテリーが搭載されています。
そして、もう一つ、ハイブリッドシステムを起動するバッテリーが搭載されているので、ハイブリッド車はバッテリーが2種類搭載されることになります。
この2つのバッテリーは、全く異なる使用方法がされるほか、バッテリーの性能も全く異なります。
モーターを動かすバッテリーを「駆動用バッテリー」と呼び、スマートフォンに使用される「リチウムイオンバッテリー」や充電式の単3電池や単4電池に使用される「ニッケル水素バッテリー」が使用されます。
しかし、起動用のバッテリーは、今までのガソリンエンジンに搭載されていたバッテリーと同じ鉛バッテリーが使用されています。
このバッテリーは「補機用バッテリー」と呼ばれ、ハイブリッド車の電装品の電力として使用されるので、今までのガソリン車のバッテリーと補機用バッテリーの使用方法は同じです。
内藤
島田
鉛バッテリーは充電するときに発生するガスが危険だから、専用のバルブ調整鉛蓄電池(VRLA)が搭載されているだよ。
でも、ハイブリッド車でも車室内に補機用バッテリーが搭載されていなければ、VRLAである必要がないから通常の鉛バッテリーが使用されているんだ。
内藤
島田
だから今までのJIS規格のバッテリーと互換性がないんだ。バッテリーサイズが全然違うからね。
内藤
島田
内藤
バッテリーが弱くなると、今までのクルマと同じように症状が出るのでしょうか。
島田
ハイブリッド車といえば、トヨタのプリウスを思い浮かべると思います。しかし、最近では多くのメーカーがハイブリッド車を販売しており、それぞれ独自の機構を持っています。
多くのハイブリッド車は、ハイブリッドシステムに異常が出ると、インジケーターに不具合を知らせますが、補機用バッテリーの寿命を知らせる機能はありません。
そのため、補機用バッテリーの寿命は突如訪れます。
ガソリン車の場合、バッテリーが弱くなるとセルモーターが弱々しく回るなど、バッテリー上がりの兆候が見られましたが、ハイブリッド車にはセルモーターが搭載されていない車両がほとんどです。
ハイブリッド車の補機用バッテリーは、始動時にハイブリッドシステムに電力を供給する役目であり、エンジン始動のセルモーターを作動させません。
ハイブリッド車はエンジンを始動させるときは、駆動用バッテリーを使用してモータージェネレーターを作動させてエンジン始動します。
セルモーターが無ければ、エンジン始動時にセルを回さないので、バッテリーの弱まりをドライバーが察知できません。そのため、ハイブリッド車はエンジン始動しないことが突如起きます。
内藤
島田
まあ、電化製品のスイッチを入れて起動させる電源と同じ感覚かな。
最近のクルマは、暗電流という家電で言う待機電流がかなりあります。そのため、クルマに長く乗らなければバッテリー上がりを起こしますが、これはハイブリッド車も同じです。
クルマは、エンジンを始動するとバッテリーに充電します。
しかしエンジンを始動すると、エアコン、カーナビといった、ドライバーが任意で作動させる電装品のほかに、エンジンが問題なく作動するために、様々な電子制御が働いています。
よって、通常アイドリングでは、十分な発電量を賄えないでしょう。
これはハイブリッド車も同じで、クルマを始動した後、停車していても様々な電装品が電力を消費します。このことから、バッテリーの電力の残量が少ないときは、走行しなければ満充電できません。
よって、長く乗らないクルマほど、長く走行しなければバッテリーに充電されないでしょう。
内藤
島田
内藤
島田
内藤
島田
バッテリー上がりでよく使われる方法としてブースターケーブルを使用して、救援車から電力を分けてもらう方法です。
この方法は、ブースターケーブルを所持していても救援してもらえるクルマが近くにいなければ、エンジンをスタートできないデメリットもあります。
ハイブリッド車がバッテリー上がりを起こし、救援してもらう場合は、取扱説明書に従いブースターケーブルをつないで始動します。
ハイブリッド車の場合、救援用端子がエンジンルームに用意されている車種があるので、よく確認しましょう。
ハイブリッド車がバッテリー上がりを起こした場合、基本ガソリン車を救援車として使用します。ただし、軽自動車は発電容量が小さいので、軽自動車では救援は難しいです。
救援してもらうには、エンジンルーム内に、救援用の端子があるので、その端子にブースターケーブルを繋いで始動します。
始動方法やつなぎ方は、クルマにより異なるので取扱説明書を確認してください。
ハイブリッド車で注意すべきは、救援車に使用できない車種がある点です。ハイブリッド車は、ハイブリッドシステムを補機用バッテリーで起動しています。
そのため、ガソリン車を救援しようとすると、セルモーターの大電流がハイブリットシステムに流れ、ヒューズを飛ばしてしまうトラブルになるからです。
ハイブリッド車でも救援車として使用できる方法がありますが、その方法は車検時のテスターに使用する特別な裏メニューのメンテナンスモードに移行させる方法のため、緊急時に一般の方が試せるかといえば、かなり難しいのでおすすめできません。
この他にも、ハイブリッドシステムを回避し、ブースターケーブルをつなぐ方法として、補機用バッテリーに直接つないで救援する方法もあります。
しかし、ハイブリッド車の補機用バッテリーは、車内やトランク内に設置されており、ブースターケーブルを繋いで救援しようとしても、市販のブースターケーブルでは長さが足りないことが考えられるので、これもお勧めできません。
そのため、本当はハイブリッド車も救援車に使用できますが、やり方が難しいので、基本は救援車として使用しないことが無難といえます。
これについては、各車で異なりますが、取扱説明書に救援車に使用できないことが明記されている車種もあるので注意が必要です。
日産が2012年に発売を開始した4代目セレナには、S-HYBRIDと呼ばれるスマートシンプルハイブリッドが搭載されており、ボンネット内にメインバッテリーとサブバッテリーと呼ばれる2つの鉛バッテリーが搭載されています。
この2つのバッテリーは、どちらか一方がバッテリー上がりを起こすとエンジン始動ができません。
そして、ブースターケーブルをつなぐときは、メインバッテリーから繋いでエンジンがかかるか試します。
もしこれでかからない場合はサブバッテリーで試します。
しかし、メイン、サブどちらに繋いでもエンジンが始動しない場合は、両方のバッテリー上がりが考えられるので、ディーラーなどに相談しないと動かないでしょう。
内藤
島田
クルマによってケーブルの太さが異なり、対応電流も違うからね。
バッテリー上がりで、最近注目を集めているのが、ジャンプスターターです。
モバイルバッテリーのような大きさで、クルマのバッテリー上がりに対応できるので、クルマに忍ばせておけば、かなり重宝するでしょう。
ジャンプスターターは、多くの商品が販売されていますが、ハイブリッド車でジャンプスターターを選ぶ場合、ハイブリッドシステムを起動できる電力さえあれば、エンジン始動するため特に大容量のジャンプスターターを選ぶ必要はありません。
バッテリー上がりが起きた場合、補機用バッテリーが寿命を迎えていることが多いでしょう。
特に電装品を付けっぱなしにしたわけでもないのに、急にバッテリー上がりを起こしたのであれば寿命と考えられます。
補機用バッテリーの交換は、今までのガソリン車のように簡単に取りはずしできますが、最近のハイブリッド車は、様々なメモリー機能が搭載されているため、バッテリー端子を外した瞬間、すべてのメモリーがリセットされ、新品バッテリーを繋いでも正常にクルマが使えない場合があります。
そこで、補機用バッテリーを交換する際は、ディーラーまたはバッテリー交換に詳しい専門ショップで行うのが無難です。
もし、ご自身でどうしてもバッテリー交換をするのであれば、メモリー機能がリセットされないようにバックアップ電源を確保します。
今は、OBDⅡやシガーソケットからメモリーをバックアップできる様々な用品が販売されているので、バッテリー購入と一緒にそのような商品を購入すれば、ご自身でも補機用バッテリーの交換はできます。
内藤
島田
さまざまな情報を学習してクルマが作動しているから、バッテリーを外すとそれらがリセットされてしまうんだ。
このほかに、ハイブリッド車は、専用のバッテリーでなければ、ガスが車内に充満して危険になるしね。バッテリーの選び方も注意が必要だよ。
内藤
島田
これは、アイドリングストップが何回行われたか、古いバッテリーの電圧や容量などをコンピュータが記憶しているんだ。
これをリセットしないとバッテリー交換しても、正常にアイドリングストップが働かない。だから、専用のスキャンツールがいるんだよ。
内藤
内藤
それで、バッテリー上がりを未然に防いで、不用意な交換から守る方法はありますか。
島田
クルマのバッテリー上がりを防ぐ方法は、今も昔も変わりはなく、こまめにクルマを動かすことです。
クルマは、止まっていても自然放電や暗電流でバッテリーの残量が減るため、エンジンを始動してバッテリーを充電しなければなりません。
しかし、こまめに運転していても、バッテリー上がりが起きることがあります。
それは、短時間の走行の繰り返しと電装品を過度に使用することでバッテリーが上がってしまいます。
クルマの充電は、オルタネーターと呼ばれる発電機からバッテリーに蓄電されます。
しかし、クルマを始動すると多くの電装品が電気を使用するので、アイドリング状態では発電量と使用する電気が同等、もしくはほんの少し上回る程度でしかありません。
このような状態で今度は、エアコンを使用し、そしてカーナビのスイッチ入れると、アイドリングでは発電量より電装品の電気使用量が上回ります。
そのため、クルマを走らせてエンジン回転を上げなければ充電に最適な電力がオルタネーターから供給されません。
こまめに走行させるなら、1週間に1回、20分から30分程度走行させるのが理想です。そうすることで、ハイブリッド車のバッテリー上がりを避けられるでしょう。
内藤
島田
ハイブリッド車はエンジンを始動せずに放置すると3、4週間でバッテリーが上がることもあるから、1週間に1度の走行が理想だよ。
ハイブリッド車に1週間に1回程度、20分も30分も乗ることができないという人もいるでしょう。
そんな場合、昔であったらバッテリーのマイナス端子を外してしまえばバッテリーは暗電流を使用しないので、1カ月程度は問題ありません。
しかし、ハイブリッド車は多くのシステムをクルマが停止しているときも動いていますから、バッテリーを外して止めると不具合が発生します。
そこでハイブリッド車の場合で、あまり乗らない場合、ソーラーチャージャーや市販の充電器を繋いでバッテリーの蓄電量を管理するのが良いでしょう。
市販の充電器は、家庭用100Vに繋いで充電できる便利さがあるうえ、万が一バッテリー上がりがあっても、自宅で充電して再スタートが可能なので、1台購入しておいて損はないでしょう。
ハイブリッド車の補機用バッテリー上がりのトラブルを避けるなら、日常点検が重要でしょう。
日常点検は、自分でも機材をそろえれば可能ですが、有人のガソリンスタンドでも行っていますし、オイル交換の時に、ついでにバッテリーのチェックをお願いするだけでもバッテリーの状態が把握できます。
ハイブリッド車は、エンジン始動時にセルモーターを作動させるクルマが少なく、バッテリー自体の劣化をドライバーが気付きにくくなりました。
また、セルモーターが回るタイプのマイルドハイブリッド車も、補機用バッテリーを最大限使用するよう設計されているので、いきなりエンジンがかからなくなるトラブルがあります。
いきなりエンジンがかからないトラブルを避けるためにも、何かのついでにバッテリー点検をしていれば、バッテリー劣化に気が付くこともできるので、思わぬトラブルを回避できます。
内藤
島田
中古車で購入してクルマに乗る人も多くいます。当然ハイブリッド車も中古車で流通しているので、中古車のハイブリッド車を購入する人も多いでしょう。
この時に注意する点は、補機用バッテリーがいつ交換されているかです。
クルマには、整備手帳が積まれており、クルマの整備記録が記載されています。それを見ると補機用バッテリーの交換時期が記載されています。
しかし、ディーラーや整備工場で交換していないと、整備記録簿への記載がありません。
その場合は、バッテリーに交換した時期が記載されたシールが添付されていないかバッテリー本体を確認します。
どちらの方法でも、バッテリーの交換時期が判明しない場合、バッテリーがどの程度の能力があるか、中古車販売店で調べて教えてもらいましょう。
バッテリーの状態を知る方法は、バッテリーテスターと呼ばれる機器で測定できます。この測定器は、バッテリーの劣化度が測定できるCCA値がわかります。
このCCA値は、コールドクランキングアンペアー(Cold Cranking Ampere)の略で、バッテリーのエンジン始動能力を示す性能基準値です。
このほかに、電圧測定や、比重測定などもあるので、中古車店でバッテリーの状態を確認してみましょう。
そして、バッテリーが劣化していた場合は、新品の補機バッテリーに交換を依頼してから購入すれば、中古車購入後にバッテリー上がりのトラブルに悩まされる心配はありません。
内藤
実際、試乗してもセルモーターがないのでバッテリーの状態を一般ユーザーはつかみにくいです。テスターで確認するのはいいかもしれないですね。
島田
内藤
ハイブリッド車には、駆動用バッテリーと補機用バッテリーの2種類が搭載されていますが、補機用バッテリーは今までのガソリン車と同様に鉛バッテリーを使用しています。
そのためハイブリッド車だからとバッテリー上がりが起きないことはありません。
補機用バッテリーは、ハイブリッド車の始動に必要なバッテリーなので、バッテリー上がりになると、ハイブリッド車は始動できません。
そして、補機用バッテリーの寿命は、ガソリンエンジンのバッテリーと同じく、平均2年から3年ですから、定期的に点検して定期交換をするようにしましょう。